片想いウイルス(短編集)


 解決したのはその一時間後。玄関のシューズボックスの上に、チョコが入っていると思われるピンク色の包みと、名前は分からないが赤くて丸っこい花が入った花鉢を見つけたときだった。

 今年のバレンタインは手作りのなめらかプリンだと言って、ゆうべふたりで食べたのに。こっそりチョコを用意していたなんて。
 彼女のことだからきっと花言葉まで考えて選んだのだろうけど、花の名前すら分からないのが悔しい。


 祥太くんへ、と書かれたカードが添えられた包みを手に取る。
 夜まで玄関に置きっぱなしというのもあれだし、会社に持って行って休憩中に食べるか、と。それを鞄に入れ、靴を履こうとしたら、驚いた。

 綺麗に揃えられていた革靴に、足を入れるスペースがなかったからだ。

 靴の中には彼女の白いハンカチが敷かれ、その上にびっしりと。一口チョコが詰め込まれていた。

 やられた。きっとゆうべ靴をみがいてくれたときだ。なるほど、ゆうべ靴をみがくと押し切ったのはこのせいか。

 今年のバレンタインは手作りなめらかプリンだと言って安心させておいてから、玄関先の花鉢とチョコを見せる。実は用意していたのかと思わせてからの、靴詰めチョコレート……。

 たった一日のために、いや、なんならこの数分のためにあれこれ考えて、準備していてくれたのか。
 計画を立てている様子や、靴にチョコを詰め込んでいる様子を想像したら、無性に彼女を撫で回したくなった。




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