待ってろあおはる
向かい合って、席に着くと。

ちづるさん、学生さんですか?
と、聞かれた。

名前を呼ばれて、少し驚いた。

あたしの顔を見て、
あ、すみません。
飛行機乗られた方が…、
ちづるさんと、名前を呼んでおられたので。

まだ少し、胸が痛んだ…。

私は…こちらに異動したばかりで。
と言ってから、少し小さい声になって…。

恋人がいたんですが…。
待てないと言われて…フラれてしまいました。

ちょっと悲しそうな顔をして。

3年も付き合ったんですが…。
私も、引き止めるだけの気持ちがもう
無かったのかもしれません。

そうなんですね…。
あたしは、まだ大学1年で。
先輩は…卒業して、東京へ行ったんです。


失礼ですが…お別れされた訳では
ないんですよね?

…はい。
焦らずにやっていこうって…
言ってくれたので…。

そうですか!
よかった。と、笑う。

え?どうして…

あ、いえ…。
たったあの時間だけでしたけど…
お二人ともの気持ちが…よくわかって。
応援したくなってしまって。

余計なお世話ですが…。と、照れたように
笑う。

いえ…嬉しい…です。
これから…不安ですけど。
少し元気が出ます。

東京まで…あと30分で到着ですね。
きっと…飛行機降りるのもそこそこに、
お電話来るんじゃないですか?
バスもそろそろ時間ですし。
行きましょうか。と、微笑んだ。


本当にバスまで見送りしてくれて。

最後まで、お世話になりました。
ありがとうございます。と、言うと。

東京まで、飛行機で一時間半もあれば
着きます。
今度はちづるさんも、当社の飛行機、
ぜひご利用下さいね。と、笑った。

バスの中…あの女性との出会いに
心から感謝しながら…。

春休みは、あたしも東京行ってみよう。と、
心に決めていた。



< 83 / 102 >

この作品をシェア

pagetop