社会は私に死ねと
「ネムは最近どうしてるの?」

サイは注文したアイスコーヒーにミルクをかき混ぜながらネムに訊いた。

「別にどうも・・・特に何もしてないよ」

「予備校の話はどうなったの?担任から言われてたじゃん」

「あれは勝手に先生が言ってただけで、私は別にいいかなって感じだったし。予備校なんて行ってないよ。まず、そんなお金もないよ」

「ふうん・・・ネムなら浪人しちゃえばいいところ行けると思うんだけどなあ」

サイは混ぜ終わったばかりのアイスコーヒーを飲んだ。

「私はね、やっと大学に慣れてきた所だよ。でもうちの大学予習が多くってさ。毎日嫌になるわ」

「そう」

サイは大学生になって染めたばかりの茶髪の髪の毛を耳にかけた。

すると、これまた大学生になってから開けたのか、小さなピアスがちょこんと見えた。

ネムは気がついた。

サイが自分から離れた場所へ行ってしまったことに。


実は今日カフェの前で偶然サイと会った時から変な違和感を感じていた。

今日はサイが珍しくロリータファッションで身を包んでいないのだ。

高校生の時は私服は必ずフリフリのブラウスとスカートと決めていたサイなのに。

ネムもロリータファッションが好きで、ワンピースを数着持っていた。それ用のアクセサリーや鞄、靴も揃えていた。

しかし、普段の買い物や習い事の塾の時にはそれらを身に付けなかった。

なぜなら、目立つからだ。

ロリータファッションは確かに可愛いのだが、同時に派手であり、変に目立ってしまう。

ネムは一度ロリータに目覚め始めた中学生の時、親にやっと買ってもらったワンピースを着て近所のスーパーへ行ったことがあった。

すると、たまたまスーパーのお菓子コーナーにいたちょっと柄の悪い数人の見知らぬ男達に「なんだ、あれ。やばいな」と笑われたのだ。

それ以来ネムはよほどのことがない限り、ロリータファッションで外出することはなくなった。
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