Perverse second
「津田さんっ。さっきからなに黙ってんですか」



「津田さんも三崎さんを褒めちぎってましたよね」



「俺に振るなよ。でも確かに三崎さんは素敵だと思うよ」



突然自分に話が振られたというのに、焦りも何もなく津田さんは笑いながらそう言った。



「津田さんって俺より長くアイツと一緒にいるのに、本当にそう思ってんですか?」



もし本当にそう思っているのなら、津田さんといえど大した敵じゃねぇな。



「アイツは高嶺の花なんかじゃないっすよ。どちらかと言えばプライベートはネガティブなダメ女です」



「柴垣はまるで三崎さんのこと知ってるふうに言うんだな」



「いやいや、俺はアイツのプライベートなんて知らないっすけど」



アンタの方が三崎とずっと一緒にいれたじゃねぇか。



どんなに俺が望んでも3年間会うことすら叶わなかった三崎に、アンタは毎日会えてたんだろうが。



声を聞けて笑顔を見れて言葉を交わせて。



それでもアイツの背負ってるものの一つも下ろしてやれなかったくせに。



爽やかな笑顔と柔らかい物腰だけで三崎を楽にしてやることはできないんだよ。



「結局アイツはただの女だと思いますけどね」



津田さんから視線を逸らすと、目を丸くしてこちらを見ていた楠原と目が合った。



俺の言葉に物議を醸している連中を横に、楠原の視線をそらすことが出来なくて、楠原の驚きが落ち着くまでそれを一心に受けていた。
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