極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
あれから十年余り。
当時の夢と今の現実はかなり違う。

ノーベル賞ものの世紀の発見ではなく、液晶パネル製造ラインの不具合原因について、ひたすら地味に検証を繰り返す日々だ。

入社のきっかけも自分の意志というより、大学のゼミの教授推薦だった。理系学生の就職は、だいたいが教授の采配で決まる。


でも入社してもうすぐ五年を迎える今、私はこの仕事が好きだと胸を張って言える。
華々しい部門でもないし、その存在すらほとんど意識されない部門ではあるけれど、液晶ディスプレイメーカーにとって、業績を左右するのは私たちが担う量産技術だ。

私はその誇りを持って仕事をしている。


そう、誇りを持ってはいるのだけど……。


私は溜息をついて自分の服装を見下ろした。

着ているのはお洒落なスーツではなく、憧れの白衣でもなく、泥臭さが漂う会社のロゴ入りのベージュ色の作業服だ。
技術職社員は事業所内では作業服を着用することが義務付けられている。


< 17 / 365 >

この作品をシェア

pagetop