君の記憶の片隅で
久しぶりなのに…
「私のこと覚えていますか?」


あの日あの時、久しぶりに会った“元”幼なじみにテンションが上がり、言っちゃった言葉。


「お前は誰だ?」


彼の言葉を思い出し、悲しみと悔しさが膨れ上がってショート寸前…


「なにやってんの?楓…」


「自問自答。」


「自問自答って…私ゃ心配だよ。」


「心配しないで桜。ショート寸前なだけだから。」


「それ、かえって良くない」


仕方ないじゃない。久しぶりに会った幼なじみは、私との記憶がない。


「そんなに見た目変わってないはずなんだけど…」


「…」


桜とは付き合いが長い。保育園の時から親友で、一番仲がいい友達。


だから転校しても仲が良くて、色々遊びに行ったりもした。


でも…


「流石に、転校しちゃってから5年だよ?会わなかったし、忘れてても無理はないよ。」


私が忘れて欲しくない理由はそこじゃない。
私たちは、ある約束をまだ果たしていないんだ。


あのとき、彼が言いかけた言葉を…


「…忘れて欲しくないのはあんたの顔を見てわかったわ。気晴らしに、食べにいきましょう?」


「ご、ごはん?」


「そう!お腹空いたんだよね。春馬と冬馬も誘って行こう!」


決定事項になってないすか?!


もうメールしてるし、


なに食べよう。


そう考えると、彼を忘れられる。


そういえば、先輩なんだよね。


会うことなくなる。学年が違うから…


探す?ストーカーで捕まるのも…


「まーた、暗くなってる!ドント ネガティヴ!」



桜は英語が苦手だ。そのせいか、英語が…
でも、桜といると安心して大丈夫って思えるよ。


「ありがとう。桜」


「んー?どういたしまして!」


ありがとう。元気ずけてくれて。


「んー。でも、春馬たちってバスケ部だよね?」


「そうみたいだね?」


「汗臭いかも…嫌だわ。」


「桜…うちの学校シャワーあるからね?」


「そうだったの?知らなかった」


「迎えに行ってみようか?」


桜さん。なにをおっしゃるんですか?


「行きたくないですよ?」


「なぜに敬語だし。いいから行くよ!」


「いーやーだー」


なんか嫌な予感しかしないもん!


行きたいよー!私の予感あたるからー。


ズルズル引きずられること数分後。


「足が痛い。」


摩擦で赤くなってるかかとを見る。


「湿布あるから一応貼りな?」


なんで持ってるし、


「なんでって、そりゃあ怪我するじゃん?
私とか、あんたとか。」


「なんで言いたいことわかったの…」


「言葉にでてた笑 おもしろかった!」


ゲラゲラ笑ってる桜をよそに、湿布をさっさと貼り終えた私は、
体育館と反対方向へ歩きだしたそのときだった。


「なにやってんの?行くよ!」


「へ?あ、えぇぇぇぇぇぇぇぇ」


体育館の前に連行されました。強制的に。


「大丈夫だって楓!覗くだけだから!あとどれくらいか、見るだけ!」


そう言って、そっとドアを開け始めた桜を見て


「それならいいけど。」


と、言うしかなかった。


やっぱり桜には弱いんだよな。


「春馬と冬馬いた!気づかないかな?」


変人に見える桜をよそに、私も覗いて見ることにした。


「え…。彩斗…」


「え?彩斗って、楓の幼なじみだった…」


「そう、先輩。」


バスケ、まだ続けてたんだ。
私もしてたけど、転校してからやってなかったんだよね。


「彩斗先輩って1つ上?2つ上?」


「1つ上だよ…」


やばい。またネガティヴに。


「あ!あんたの幼なじみに気づかれたかも!」


「え?!どういうこと?!」


「こっちに来る!走るよ!楓!」


「でも、春馬と冬馬は?」


「あとで電話して、教室まで来てもらおう!」


「うん」


バタバタ走っていると


「かーえーでー!教室すぎてっぞー!」


と言われてみると、たしかに通り過ぎていた。


ボーっとしすぎたのかな。


「今日は行くのやめよっか?色々ありすぎたんだよ。ゆっくり休んで、明日行こう?春馬と冬馬にはメールしておくから。ね?」


ありがとう。桜…


「そうするよ。私からもごめんってメール送っておくよ。またね」


「きっちり、休め!バイバイ、楓!」


桜は春馬と冬馬を待つらしく、教室に残るらしい。


だから、今日は私1人。


そう、思っていたんだ。
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