指で紡ぐ愛のうた

4月10日

一サァッ…。
今日も嘉穂来なかったなぁ。
そう思いながら、私はあの場所で部活までの時間を潰すことにした。
校舎からも見えない場所にある中庭的なこの場所。
去年、校内で迷った時に偶然見つけたんだよな。
部活までの時間、私はここで時間を潰すことにした。
ひとりでのんびり…え?
人影が見える。
その人影が私に気づいた。
「あの、グランドってどこ?」
「ここを右に行ってまっすぐ行くとあるよ」
咄嗟に答えちゃったけど、なんでこの男子生徒ここにいるの?!
「ありがとう。ちょっと迷っちゃって」
そう言ってはにかむ彼。
その笑顔に少しドキッとした。
「ここ、いい場所だね」
「え?あぁ、うん」
それだけ言うと、彼はグランドの方へ歩いて行った。

「こんにちはー!」
先輩たちに挨拶をし、仕事に取り掛かる。
私は陸上部のマネージャーをしている。
すると部長さんに声をかけられた。
「加藤さん、この子新入部員だから部の説明よろしく」
「わかりました!」
そう答えて振り返ると、そこに居たのはさっきの男子生徒だった。
「あ、さっきの、先輩だったんだ…」
そう言って深々と頭を下げる彼。
「頭上げて!大丈夫だから!!」
そう言うと、彼は渋々頭を上げた。
それから事務的な会話をいくつかし、その日の練習は終わった。
彼1年生の黒田功くんと言うらしい。
その後、彼とLINEを交換し、私は帰路についた。
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