恋をしようよ
「何で私なんかと飲んでんですか、カズヤさん!」

三杯目の梅酒のロックが、思いのほか度が強かったのか、何だかナツは呂律が回らなくなってきていた。
なんだか変に絡んでくるし。


「この前も言ったろ、ナツが可愛いからじゃね?」

すぐ届きそうな距離の彼女の顔を、じっと見つめてみると、目が合ったと思ったとたんすぐそらされてしまう。


「嘘です、私なんか可愛いはずないもん、自分のことは自分でよくわかってますもん。
この前石井さんに言われた事だって、言われて当然だって思ってたし。」

だからといって、男に媚びたり、自分のポリシーを曲げてまでお洒落して着飾ったりは出来ないんだと、そんな風に話すから、俺はそういうところがいじらしくて可愛いんじゃないかと改めて思った。


「可愛いってさ、可哀想って意味からきてるらしいぜ・・・」


小さいもの、不憫なもの、思わず手を取って守ってあげたくなるもの・・・そういった意味合いなのかもしれないな。


「お前見てると、何だかいじらしくなるんだよな・・・なんだろそういうの。
でも、同情とかそういうのじゃないからな。」


なんだか上手く言えないもんだな・・・


「私は私ですから、何言われたって変えませんから。」

彼女は酔いながらも力強く話す。


「そうだな、そういうとこ俺も好きだ。」


いつもの悪いクセなのか、思った事をすぐ口に出しちまう。
ナツは目を見開いて、急に俺の顔をじっと見つめ返した。




「だから、そういうこと軽々しく言わないでくださいよ。」


ナツの右の目から、一筋の涙がこぼれて、ああ何を失敗したのだろうかと急に鼓動が早くなるのを感じていた。



「軽い気持ちじゃねーよ、思ったこと言っただけだ。」

左手で彼女の涙をぬぐってやりながら、だけどゴメンなって何だか謝ってしまった。




この涙は、どんな意味だったのだろうか?

その時の俺は、まだ理解できないままだった。



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