against
3.感覚
「雨ばっかだね」

窓の外の昼間だと言うのに暗い空を見て、綾菜が呟いた。

綾菜の横顔も惚れ惚れするほど綺麗。

「ほんとだね〜」

小さなお弁当を、かわいらしいキャラクターのフォークで突きながら、奈津美。

私も「う〜ん」と外を眺めながら答える。

今日、電車に乗った瞬間に不安になった。

それでも二人がいつもと変わらない様子で心底ホッとした。

これでもかってほど小さいお弁当箱に、ぎっしり詰まった母の料理にもホッとする。

『こんなお弁当箱じゃお腹空くわよ』なんてよく言われる。

母の言う通りこんなお弁当箱じゃお腹は満たされない。

それでもやっぱり私は小さなお弁当を選んでしまう。

お昼はこうやって二つの机をくっつけて、三人で食べるんだもん。

「今日どっかいく〜?」

お弁当を食べ終えた奈津美が、化粧ポーチを漁りながら言った。

「私、今日はちょっと無理かな」

綾菜の言葉に少し空気が濁った気がした。

そのほんの少しが私には息も出来ないくらい苦しい。
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