外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
手に取った折り畳みナイフを懐に収め、奏介はグッと胸を張った。


「勝ちたいなら、自身の代理人である弁護士を信じ、委ねろ。こんな暴挙は、信頼関係を崩壊させる。マイナス材料にしかならん」


凛と声を張った奏介の向こう側で、牧野が肩を震わせるのを見た。
と同時に、背後から「奏介!」と声が聞こえてくる。
ハッとして振り返ると、回廊の方から何人か人が走ってくるのが見えた。
周防家の男性の使用人と、お義父さんだと認識できた。


「二人とも、無事か!?」


いつも雅なお義父さんが、血相を変えて声を荒らげている。


「俺と七瀬は無事です。……この男、頼んでもいいですか」


奏介の声は、落ち着き払っていた。
彼の返事を聞いて、数人の使用人が牧野に向かって走っていった。
彼らが、うなだれている牧野を前後左右から取り囲むのを見て、奏介もスッと踵を返す。


「あ……」


私は反射的に声をあげ、急いでその場に立ち上がった。
まだ少し足がガクガクしているけれど、なんとか両足で地面を踏みしめる。
私の視線の先で、奏介が勢いよく左の袖を引っ張った。
手首に嵌めた時計で、時間を確認して……。


「……マズい!」


勢いよく、踵を返す。


「七瀬、君も来い!!」


横を通り過ぎる奏介が、私の腕を掴む。


「えっ、ちょ、待って……!」


足が縺れそうになりながら、私も必死に走った。
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