外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
奏介の妻として胸を張って、お茶会のお手伝いができるようになりたい。
それなら、ここはご厚意に甘えさせてもらい、少しでも早く役に立つ嫁になるのが先決じゃないだろうか。


私はそこまで思考回路を働かせて、そおっと藤悟さんを窺い見た。
彼は私の返事を待って、黙ったままニコッと微笑む。
その笑顔を見て、私は意を決した。


「あの。本当にご迷惑にはなりませんか?」

「うん」

「じゃ、お願いしてもいいですか」


彼の即答を聞いて、私も勢い込んでお願いした。
それには「気持ちいいくらい即決だねえ」と苦笑いが返ってくる。


「私、奏介に恥をかかせてしまったままでは、嫌なんです!」


お茶会での激しい羞恥を胸に蘇らせて、自分を鼓舞した。
本当に、穴を掘ってでも隠れたいほど、情けなかった自分。
何度思い出しても泣きたくなるけど、あの失敗があるから、奏介のために頑張れる!


胸の高さに持ち上げた手を、ギュッと固く握りしめる。
向かい側で藤悟さんが、ふふっと笑って目を細めた。


「OK。じゃあ、可愛いお弟子さん。これからよろしく」


私は「はいっ!」と返事をしながら、その場に立ち上がった。


「よろしくお願いします、藤悟さん! じゃなくて、先生。……師匠?」


大きく首を傾けて呼び方を改める私に、彼は口元に手を当ててぶぶっと吹き出した。
< 62 / 226 >

この作品をシェア

pagetop