冷たい蜂蜜
また駅に向かった。


彼はいないか確認した



いないに決まってる



なんて決め付けてきたね


心地いい風を浴びながら周りを確認する



「「いないよね。」」



その時



「待って!」


聞いたことのある声


振り返ると彼が走ってきた



待っていたのか?と思った



新幹線の発車時刻が迫る



あとちょっと



彼は走ってくる



その時、時間が止まっているかのような

感覚に陥った



早く早く



もう時間だ。



彼はやっと着いた



彼は私を抱きしめようとしたがやめた



それは何故か



彼は私がハグなんてものを求めていないのを悟ったから




どこにも行かないなんて嘘だって知ったから




そんな悲しいこと彼は受け止めたから




見えない涙を見せた





ごめんね



あなたの哲学はもう海に沈めた




私は行く




ばいばい



冷たい蜂蜜






「もう時間だ、私行くね。
また埋め合わせするからね」



「海月、....気を付けてね」




喉元で言葉を変えたのがわかった




あなたの光は強い




これで1歩下がっちゃったね




「ばいばい」




新幹線は私と駿人を切り離した




どこにも行かないなんて嘘ばっかついてごめんね




新幹線に乗った



もう戻りたくないの



早く着いてよ。







駿人はあの時何を言おうとしたのかな。



でもあなたの言葉はもう興味はないの



私にはもう必要ないの。



だってあなたは自分の道を歩んでいるでしょう?



明日になればあなたは私から遠ざかるでしょう?




似ている、嘘をつくところが。




あなたは私に嘘をつき、私はあなたに嘘をつく。




これでおなじ、変わらない。




もういいから。



そろそろ退屈を脱ぐ時間だ。






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