強引上司に捕まりました
「天野、これから飯行こう。あすかは今日実家に戻ってるから、家に帰っても晩飯ないんだよ。俺に付き合え」
真島課長が言った『あすか』というのは、彼が溺愛する奥さんの名前だ。
総務課にいた頃、一度お会いしたことがある。
芸能人かと思うくらいの美人さんで、強烈に覚えている。
「緒川も一緒にどうだ?」
突然話を振られて目を見開いた。
「いえいえ。私は遠慮します」
即座に真島課長のお誘いをお断りする。
エリート課長ふたりとご飯に行くなんて、とんでもなく恐れ多いことだ。
もし、誰かに見られでもしたら、社内でどんな目で見られることか、想像しただけで冷や汗ものだ。
それに、いくら上司と言えども私は男の人とご飯なんて行ったことがない。
なにを話していいのかわからないし、気まずいだけだ。