お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
けれども、意を決して呼びかけても、『どうした?』と彼が振り向いたら、急に怖気づいて好きだと言えなくなるのだ。

『なんでもない』と答えて自分の部屋に逃げ込み、ため息をついたことが、五度ほどあった。


今も「うーん」と唸るだけで、告白してみるとは言えない。

パスタ皿の中の小海老をフォークで集めて、一列に整列させていた。

そうすることで、期限が迫っていることへの焦りや、告白できない弱い自分の心をごまかし、正面から向き合わないようにしているのだ。


そんな私を見ている茜は、「莉子らしくないな」と少し笑って非難した。

「私らしいって、どんな?」と尋ねれば、彼女は口に入れたサラダを飲み込んでから、教えてくれた。


「きっぱり、はっきり、さっぱり。それが莉子だよ。熱いところもある」


今みたいに行動に移さずにうじうじと悩んでいるのが私らしくない、というのはわかるけど、“熱い”とは……?

首を傾げる私に、茜はクスクスと笑って言う。

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