お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
三階の廊下を進むと、エレベーターホールにたどり着く。


時刻は十四時になろうとしているところで、これから五階にある懐石料理店のお座敷で、会食しながらの見合いが始まる。

これまでは渋々、見合いの席に着いてあげた私だが、十度目となる今回は、『いい加減に諦めてよ!』という不満が膨らみ、相手の情報も右から左に聞き流して名前も記憶していないし、写真を渡されても開いて見ることもしなかった。


これまで紹介されたお坊ちゃまたちは皆、自慢話のような、私にとっては退屈な話しかできず、彼らが興味を示すのは私の中身よりも容姿であった。

着飾ればそこそこ美人だと言われる私なので、自分の横に飾って置くのに適切かどうかだけを気にする、実につまらない男たちだ。

当然、見合い終了後に私からお断りした。


今回の相手も、どうせ同じような男だろう。

そう思うので、大人しく席に着く気はない。

自宅を出た時と美容室に入る前に二度、脱走を企てたが失敗し、両親を余計に警戒させてしまったけど、今度こそは……。


無人のエレベーターが到着して、私は中へと連れ込まれる。

まだ両腕はしっかりホールドされているが、父が扉を閉めるボタンを押すと、ふたり揃って気を緩め、私から腕を離した。

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