イジワル上司にまるごと愛されてます
「木下主任は職歴も長いし、十分な経験を積んでいる。七瀬主任をリードしてやれるんじゃないかな。キミなら同僚や部下を育てることができると私は思っているよ。人を育て、自分も育つ。そうしてキミ自身も大きく成長できたら、いっそうのキャリアアップにもつながるはずだ」

 部長が温かな口調で言い、敦子は顔を上げた。

「はい……。もう少し周囲に目を向けて、業務に励みます」
「頼むよ。私はキミにとても期待しているんだ」

 部長が言ったとき、戸襖がノックされた。

「失礼いたします」

 戸襖が開けられ、店員がドリンクを運んできた。来海の前にはカクテルグラスが置かれる。カシス娘は日本酒とカシスリキュール、乳酸菌飲料が使われていて、白く濁った濃いピンク色の見た目もかわいらしい。

 突き出しのたこわさびに続いて、部長が注文した料理がこたつ机に並べられた。

「さて、堅苦しい話はもうおしまいにして、あとは純粋に楽しもうじゃないか」

 部長が日本酒のグラスを持ち上げ、「乾杯」と言った。

「乾杯」

 来海たちもそれぞれグラスを取り上げ、互いにカチンと合わせた。
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