イジワル上司にまるごと愛されてます
「もし連れて行きたい人がいるのなら、相談してくれ。婚約者として連れて行ってくれても構わないし、赴任前に籍を入れれば、扶養手当を出すことも可能だ」

 部長に言われて、柊哉はゆっくりと口を開く。

「まだ……恋人というわけではないのですが」
「それは……難しい問題だな」

 部長が腕を組んだ。

「そうですね……」

 将来を約束しているわけでもない、ましてや付き合ってもいない相手を連れて行くことなど、できないだろう。柊哉は唇を引き結んだ。

「キミのほかに一緒に辞令が出た二人も独身だ。現地で新たな出会いもあるかもしれんしな」

 柊哉は思いきって口を開く。

「ほかに……社員を連れて行くことはできませんか?」
「社員を?」

 部長は問いかけるように柊哉を見た。柊哉はゴクリと唾を飲み込んで言う。

「たとえば……七瀬さんを」

 部長はしばらく柊哉をまっすぐ見ていたが、やがて苦渋の表情を浮かべた。
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