イジワル上司にまるごと愛されてます
「あんまり……慣れてない?」

 来海は恥ずかしそうに首を縮込めた。

「あ、や……あの、慣れてないっていうか……まったく……ないっていうか」

 柊哉は驚いて、来海の胸から手を離した。

「……柊哉?」

 彼は耐えるように目を伏せ、大きく息を吐き出す。そうしてゆっくりと体を起こした。

(来海はこんなふうに抱いていい女じゃない)

「やめよう」
「え、なんで、どうして?」

 来海は片肘をついて上体を起こした。柊哉は右手でくしゃくしゃと自分の前髪をかき乱す。

「ダメだ。俺には来海は抱けない」

 柊哉はいら立たしげに息を吐いた。

 このまま感情に任せて抱いてしまいたい。けれど、そうすれば彼女を離せなくなる。ロンドンに連れて行ってしまいたくなる。

 だが、来海は『日本でがんばる』と言っていたのだ。来海はフィーカの本社に必要な人材。彼の恋情で来海の未来を奪ってはいけない。一時の熱情で、フィーカでの彼女の計画を、夢を奪ってはならない。
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