イジワル上司にまるごと愛されてます
「あ、雪谷くん、こんなところにいた! ねえ、私とペア組もうよ」

 オフショルダーのブラウスとショートパンツといういささか露出気味の同期が、柊哉を見つけて近づいてきた。胸元まである明るい茶髪は緩くウェーブがかかっていて、ぱっちりした目鼻立ちの彼女は、前野(まえの)瑚子(ここ)という名前だ。男性社員の間で『かわいいよな~』などとかなり注目を集めていた。とはいえ、彼女は研修が終われば千葉の販売店に配属になるため、柊哉とは仕事上の関わりはほとんどない。

「遠慮しておく」
「えー、どうして?」
「興味ない」

 柊哉はそっけなく言った。瑚子は隣のチェアを引っ張ってきて、柊哉の横に腰を下ろす。

「うん、わかるー。肝試しなんて子供じみてるよね。おまけに季節感もぜんぜんないし」

 瑚子は肩をすくめてから、柊哉に体を寄せてささやく。

「ね、二人で抜け出しちゃおうよ」

 瑚子が胸の谷間を見せつけるように身を乗り出してくるので、柊哉は体を引いた。

「興味ないって言っただろ」
「だから、二人で抜け出そうって――」
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