イジワル上司にまるごと愛されてます
 来海が言うと、柊哉は赤ワインを一口飲んで微笑んだ。

「来海が喜んでくれるなら、俺も嬉しい」

 そう言って柊哉が笑顔を見せてくれることも、来海にはとても嬉しい。

(私が喜んで柊哉が嬉しく思ってくれて、そんな柊哉を見て私が幸せな気持ちになるなんて)

 なんだか幸せのスパイラルみたい、と思って、来海はクスッと笑みをこぼした。それを見て柊哉が小首を傾げる。

「なに?」
「あのね、私が喜んで、それを柊哉が嬉しく思ってくれて、そんな柊哉を見て私が幸せな気持ちになるなんて不思議だな~って思って」
「確かに不思議かもしれないな」

 柊哉はワイングラス越しに来海を見た。

「来海が幸せだと思ってくれると俺も幸せになれる。来海が好きだから、誰よりも大切に思っているから、そう思う。そして同じことを来海も思ってくれているのは、奇跡的なことなのかもしれないね」

 確かにそうだ。同じ気持ちを持っていても、伝えられずに四年も離れてしまったこともあるくらいだ。

 同じ気持ちを持つこと。そして通じ合えること。

(そっか、私たちの関係って奇蹟なのかも)

 我ながらロマンチックすぎるな、と来海は頬を染めて、ワイングラスに手を伸ばした。にやけそうになるのを隠そうと、ゆっくりと赤ワインを飲む。スパイスの香りが残るワインは、肉料理との相性が抜群だ。

 ゆっくり味わって肉料理を食べ終えると、食後のドリンクとして、柊哉にはコーヒーが、来海には紅茶が運ばれてきた。
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