イジワル上司にまるごと愛されてます
(まだメールを送ってくれてないってことは、うちとの取引を決断できてないのかな)

 そのことを気にしながらも、ほかのメールへの返信を打ち始めたとき、課長席から声をかけられた。

「七瀬主任」

 来海はビクッと肩を震わせた。

「は、はいっ」

 柊哉の方を見ると、彼はモニタから来海へと視線を動かして言う。

「財務会計部から問い合わせがあったんだけど、東南アジアの手工業グループが対象の職人養成プロジェクト申請書はどうなってる?」

 当たり前だが仕事の話をされ、来海は肩から力を抜いた。

「ええと、先週の金曜日にメールで返事をもらえるはずだったのですが、まだなので、今日一日待って返事がなければ、もう一度問い合わせてみようと思っています」
「わかった。財務会計部には保留で返事をしておく」
「よろしくお願いします」

 そのとき、敦子が言葉を挟んでくる。
< 79 / 175 >

この作品をシェア

pagetop