春は僕らを攫う
第1章 四月の出会い


四月、暖かなやわらかい日差しが僕を包み込む。
通学路の脇に植えられた花や桜の木は白い日差しに照らされなんだかいつもより綺麗に見える。
通学路は桜のアーチをくぐるように設計されている。一直線に校門まで黒いアスファルトが続いており、その上にピンクの花びらが舞っている。

僕は今日から中学3年生になる。が、とくに何も変わらない。いつも通りの日だ。
少し違うといえば今日は春休み明け初めての登校ということで、
通学路では久しぶりに会った友達と再会を喜ぶ女子の声が聞こえてくる。


別に受験生の年だからといってこの時期は特に忙しくなるわけでもない。

僕の通う染井野中学校から難関高校へと行く人は多くない。ほとんどの人が人並み程度に
勉強しておけば進学できる高校へと進む。だから今から焦る人は少ない。
もちろん難関の高校に進む人もいるわけだが、そこは個人の頑張りといった感じだ。


ここは普通の人が普通の学校生活を送れ、普通の高校へ進む、普通の人生を送るための学校だ。
普遍的でありたい僕のような人のために用意された場所といってもいい。


それに将来のことなんか今から考えても想像もつかない。
僕が将来どうなっているか興味はあるけど。


桜のアーチの下を歩いていると淡いピンクが僕の上からふわり、ふわりとやさしく舞い落ちる。

きれいだ。

そう思いながら僕は校舎へと向かって歩く。
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