線香花火

「毎日」

今日も、子供の泣き声で目が覚める。
いつもと変わらない毎日。

目が覚めれば、すぐに点滴で、
お腹がすいていなくても
必ずご飯を食べさせられる。
すべては、健康のためにと―。

箸を持ち、ご飯を食べようとする。
一口・・・また一口・・・と少しずつ食べる。
もうお腹のほうはパンパンで、
食べる気にもならない。

「ご馳走様。」

一言いうと箸を置いて、
ベットにもぐりこんだ。
10分程すると
看護士がやってきて食事回収をする。

「涙ちゃん。またこんなに残して・・・
病気が治らないわよ?もういらないの?」
「もういりません。 ご馳走様でした。」
「まったく・・・」

呆れているのだろう・・・。
ここ1週間、まともに食事をとっていないもの。
ガチャガチャと、食器を片付ける音が聞こえる。

「それでは、失礼しました。」

看護士がこの部屋の食器を
すべて回収し終えて部屋を出る。

「はぁー…」
ゆっくりとベットから起きる涙。

つやのある、綺麗な髪。
くりくりとした、かわいい大きな目。
か細い腕。
綺麗な白い歯。
彼女は、長崎 涙(ナガサキ ルイ)。
高校2年生。
小学校の頃からずっと入院している。
喘息の発作が激しくなったからだ。

「翔くん…」
ふいにこぼれるこの言葉。

今留学でアメリカに行っている、翔。
涙の彼氏である。
すらっと高い背。
大きな掌。
彼は、矢野 翔(ヤノ ショウ)。
涙と同じ高校2年生である。
昔、涙と同じ病室に入院したことがある。
先に翔のほうが退院し、それから毎日
見舞いに来てくれていた。
「両親」は、相変わらず見舞いになんて来ない。
いや、来る気がないんだ。
知ってる。
私がその「家族」の一員ではないことくらい。
だから、涙の一番の支えが慎だった。

【ショウ・・イマドコニイルノ?イマスグアイタイノニ】

こんな願いも聞き届けてはくれない。
電話も手紙も出せず、もう一年と半年が経つ。

涙の頭の中は、翔のことでいっぱい。
気持ちが揺らいだことなどまったくない。
会いたいという気持ちがあふれたら・・・
この気持ち・・・届くのかな・・・。

    【アイタイ】
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