SKETCH BOOK
絵の中の少女






「ねえ、なんで川なの?」


日曜日、あたしは
不機嫌マックスでそう呟いた。


まだ肌寒さも残る今日この頃。


ショートパンツに大きめのパーカーを着たあたしは、
川の流れを目で追っていた。


どうしてこんなところに……。


不満しかないこの状況で楽しそうなのが二人。


「パパ、なんで川なのさ!」


「釣りは楽しいぞぉ!梓ちゃん」


「釣りなんか楽しくないやい」


「ふっ。お前には
 男のロマンが分かんねぇんだよ」


「何がロマンよ……」


その言葉に鼻で笑うと、橙輝に頭を叩かれた。


「痛い!」


「お前が馬鹿にするからだろ」


「だからって
 叩かなくてもいいでしょう?」



どうしてこうなるの?


橙輝といると、あたしは調子が狂う。


憎たらしいし、本当にむかつく。


乱暴なところも、
馬鹿にしたような笑い方も、


全てが嫌い!


こんなやつとあたしは家族になるのか。


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