イジワルな彼は私を溺愛しています

マイクを親父に押しつけて有紀の部屋に走った。

「カズくん!」

誰だと思って振り向くと女がいた。

「本当に結婚しちゃうの?」

「そうだけど」

あんた誰?という言葉を飲み込む。

「わ、私ね。ずっとカズくんのことが好きだったの」

知るか。

「ごめんね」

俺はそう告げて俺の部屋の扉を開けた。

「待って!私諦めないよ!」

名前も知らない女は俺の部屋に入ってきた。

有紀を見られたらめんどくさい。

俺は女の腕をつかんだ。

「早く出ろ」

腹から低い声を出した。

「っ……」

女はひびったらしく出ていった。

「ったく」

舌打ちをして有紀のいるベッドの方にいく。

「有紀、大丈夫か?」

「ん、うん」

まだ眠いらしく目を擦っている。

「化粧大丈夫か?」

有紀の目元はひどいことになってしまっていた。

「あーあ、やっちゃった。これお母さんに怒られる」

有紀はウエットティッシュで化粧をおとしながら言った。

「自分でできないのか?」

「やったこと無いから無理」

今どき化粧をやったことない女がいるのか。有紀は本当に面白い。

「これから何がある?」

「レクリエーション」

「何それ?」

「お互いの親睦を深めようと言うことで親父がなんか企画してるらしい。俺もなにやるか知らない」

「それなら化粧してもらわないと」

有紀はベッドから起き上がって着崩れた着物を見て眉をひそめた。

「着物も……どうすればいいか……」
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