ツンデレ黒王子のわんこ姫
歓迎会会場には、同期の中野遥香と向かうことになった。
18時15分、30人程の座席は自由席ということで、早めに来ていた社員がそれぞれに座席を確保していた。
芽以と遥香が、幹事にお礼を言って会費を払い終わると
「白木さん、中野さんこっちこっち」
と、営業部の井上と牛島が手招きをしてきた。
10人ずつ腰かけられるテーブルが3つの島を作っており、芽以と遥香はそれぞれ壁際の一番奥に連れていかれた。
芽以の隣が井上、遥香の隣が牛島という構図になった。
すぐに歓迎会開始時間となり、残業で遅れてくると連絡のあった数名を除いて、ほとんどの参加者が揃ったのを確認すると、幹事が開会の挨拶を始めた。
「本日は、営業部、商品開発部、経理部合同の新入社員歓迎会に多数ご参加頂き、ありがとうございます」
会社全体の歓迎会は、入社早々に社内の講堂を貸しきってお酒抜きで行われた。
今回は、交流の深い三部署のみによる新入社員歓迎会だそうだ。
ちなみに毎年恒例で行われている。
営業部部長の乾杯の音頭に続いて、各部署に配属された新人12名がそれぞれ挨拶をすることになった。
少し遅れてきた沢城優太は、余った席に座るしかなく、芽以と遥香とは離れた座席に座っていた。
あいうえお順で挨拶するように告げられ、ほどなくして、芽以の順番がやって来た。
「商品開発部に配属されました、白木芽以です。よろしくお願いいたします。」
あちこちから盛大な拍手が起こる。
隣りのテーブルの島に、経理部の笠原をはじめとする腐女子グループの面々が顔を連ねていたが、
芽以と健琉、葵生が並んで座っていないこと、昼休みの社食での萌えタイムを復活させてくれたこと、に敬意を表し、芽以に対してもにこやかに拍手を送っていた。
続いて遥香、そして12名全員が挨拶を終えると、それぞれのテーブルで食事と雑談が始まった。
健琉はまだ来ていない。
葵生も取引先でトラブルがあったようで遅れてくるらしい。
二人の座席は、もちろん"二人が並んで座れるようにと"笠原達がしっかりと確保していた。
「白木さんってS女子大でしょ?幼稚園からエスカレーターで進学したの?」
「はい」
芽以は、乾杯のために渡されたビールのコップを手に持ち、少しずつ飲み進めながら隣で話しかけてくる井上に対応していた。
遥香は牛島のマシンガントークに圧倒されて、こちらの様子を気に止めることもできない様子だった。
「ビールの次は何を飲む?」
メニューを手に顔を近づけてくる井上に少し嫌悪感を感じはじめた芽以は、さりげなく距離をとろうとするが、左側を壁に阻まれてうまくいかない。
開始早々、ビール瓶を次々に空にしていた井上は、遠慮なく芽以に体を密着させてくる。
他人との距離が近いと評されてきた芽以も、酔っ払った男性のお酒の臭いと横柄な態度に不快感を感じずにはいられなかった。
「ねえ、白木さん、彼氏いないんでしょー。俺と付き合ってよー。」
完全に井上が酔っぱらい、芽以の肩に手を回そうとしたその瞬間、
「わ、私ちょっと化粧室に行って来ます」
と言って、芽以は鞄を持って立ち上がり、その場を取り繕った。
入れ違いにやって来た葵生が、化粧室に行こうとする芽以を呼び止めた。
「井上に絡まれて大変そうだったけど大丈夫?あいつ酒癖悪いから」
「大丈夫です」
芽以は苦笑して、化粧直しのために席を離れることを葵生に告げてお辞儀しその場を去った。
18時15分、30人程の座席は自由席ということで、早めに来ていた社員がそれぞれに座席を確保していた。
芽以と遥香が、幹事にお礼を言って会費を払い終わると
「白木さん、中野さんこっちこっち」
と、営業部の井上と牛島が手招きをしてきた。
10人ずつ腰かけられるテーブルが3つの島を作っており、芽以と遥香はそれぞれ壁際の一番奥に連れていかれた。
芽以の隣が井上、遥香の隣が牛島という構図になった。
すぐに歓迎会開始時間となり、残業で遅れてくると連絡のあった数名を除いて、ほとんどの参加者が揃ったのを確認すると、幹事が開会の挨拶を始めた。
「本日は、営業部、商品開発部、経理部合同の新入社員歓迎会に多数ご参加頂き、ありがとうございます」
会社全体の歓迎会は、入社早々に社内の講堂を貸しきってお酒抜きで行われた。
今回は、交流の深い三部署のみによる新入社員歓迎会だそうだ。
ちなみに毎年恒例で行われている。
営業部部長の乾杯の音頭に続いて、各部署に配属された新人12名がそれぞれ挨拶をすることになった。
少し遅れてきた沢城優太は、余った席に座るしかなく、芽以と遥香とは離れた座席に座っていた。
あいうえお順で挨拶するように告げられ、ほどなくして、芽以の順番がやって来た。
「商品開発部に配属されました、白木芽以です。よろしくお願いいたします。」
あちこちから盛大な拍手が起こる。
隣りのテーブルの島に、経理部の笠原をはじめとする腐女子グループの面々が顔を連ねていたが、
芽以と健琉、葵生が並んで座っていないこと、昼休みの社食での萌えタイムを復活させてくれたこと、に敬意を表し、芽以に対してもにこやかに拍手を送っていた。
続いて遥香、そして12名全員が挨拶を終えると、それぞれのテーブルで食事と雑談が始まった。
健琉はまだ来ていない。
葵生も取引先でトラブルがあったようで遅れてくるらしい。
二人の座席は、もちろん"二人が並んで座れるようにと"笠原達がしっかりと確保していた。
「白木さんってS女子大でしょ?幼稚園からエスカレーターで進学したの?」
「はい」
芽以は、乾杯のために渡されたビールのコップを手に持ち、少しずつ飲み進めながら隣で話しかけてくる井上に対応していた。
遥香は牛島のマシンガントークに圧倒されて、こちらの様子を気に止めることもできない様子だった。
「ビールの次は何を飲む?」
メニューを手に顔を近づけてくる井上に少し嫌悪感を感じはじめた芽以は、さりげなく距離をとろうとするが、左側を壁に阻まれてうまくいかない。
開始早々、ビール瓶を次々に空にしていた井上は、遠慮なく芽以に体を密着させてくる。
他人との距離が近いと評されてきた芽以も、酔っ払った男性のお酒の臭いと横柄な態度に不快感を感じずにはいられなかった。
「ねえ、白木さん、彼氏いないんでしょー。俺と付き合ってよー。」
完全に井上が酔っぱらい、芽以の肩に手を回そうとしたその瞬間、
「わ、私ちょっと化粧室に行って来ます」
と言って、芽以は鞄を持って立ち上がり、その場を取り繕った。
入れ違いにやって来た葵生が、化粧室に行こうとする芽以を呼び止めた。
「井上に絡まれて大変そうだったけど大丈夫?あいつ酒癖悪いから」
「大丈夫です」
芽以は苦笑して、化粧直しのために席を離れることを葵生に告げてお辞儀しその場を去った。