ツンデレ黒王子のわんこ姫
コンコン
旅館に来て2日目。
芽以は、離れの客室でぼんやりと、ここに来る前に本屋で買いだめした小説を読んでいた。
夕飯時にしか現れないはずの旅館のスタッフが入り口のドアをノックしているらしい。
「?」
こんな時間に用事があれば、内線電話がかかってくるはずだ、と少し考えればわかるはずなのに、お嬢様育ちの芽以は、少し警戒心がなさすぎた。
「はい」
内鍵を開ける芽以の前には、宿泊中に面倒を見てくれている30代の仲居の女性、山本が立っていた。
「黒田さま、お待ちかねのお方が参りましたよ」
「えっ?」
芽以は一瞬、キョトンとして首を傾げる。
誰も来るはずはない,,,だって、全て芽以が咄嗟に思い付いた作り話なのだから。
「芽以」
山本の後ろから、この場に現れるはずのない人物の姿がニョキっと顔を出した。
「!!」
驚きすぎて声のでない芽以に、
「待たせてすまなかった」
と、健琉が極上の微笑みで告げた。
「た、健琉さん」
頬を染めるでもなく、青ざめていく芽以に、今度は山本が首を傾げる。
「ご案内ありがとうございました。後程、女将にもご挨拶に伺いますので」
そう言って微笑みを称えたまま、健琉は山本に頭を下げると、玄関の引き戸をガラガラと閉めてしまった。
「さて」
健琉の微笑みに、立ちすくむ芽以は一言も発せずに固まっている。
「どういうことか全て白状してもらおうか」
芽以を壁際に追いやって、壁ドンをする健琉の目は、キラキラと意地悪に輝いていた。
旅館に来て2日目。
芽以は、離れの客室でぼんやりと、ここに来る前に本屋で買いだめした小説を読んでいた。
夕飯時にしか現れないはずの旅館のスタッフが入り口のドアをノックしているらしい。
「?」
こんな時間に用事があれば、内線電話がかかってくるはずだ、と少し考えればわかるはずなのに、お嬢様育ちの芽以は、少し警戒心がなさすぎた。
「はい」
内鍵を開ける芽以の前には、宿泊中に面倒を見てくれている30代の仲居の女性、山本が立っていた。
「黒田さま、お待ちかねのお方が参りましたよ」
「えっ?」
芽以は一瞬、キョトンとして首を傾げる。
誰も来るはずはない,,,だって、全て芽以が咄嗟に思い付いた作り話なのだから。
「芽以」
山本の後ろから、この場に現れるはずのない人物の姿がニョキっと顔を出した。
「!!」
驚きすぎて声のでない芽以に、
「待たせてすまなかった」
と、健琉が極上の微笑みで告げた。
「た、健琉さん」
頬を染めるでもなく、青ざめていく芽以に、今度は山本が首を傾げる。
「ご案内ありがとうございました。後程、女将にもご挨拶に伺いますので」
そう言って微笑みを称えたまま、健琉は山本に頭を下げると、玄関の引き戸をガラガラと閉めてしまった。
「さて」
健琉の微笑みに、立ちすくむ芽以は一言も発せずに固まっている。
「どういうことか全て白状してもらおうか」
芽以を壁際に追いやって、壁ドンをする健琉の目は、キラキラと意地悪に輝いていた。