甘い運命

3

驚き固まる私の背中を、修一さんは優しく撫でた。

「都が酔っぱらって、初めてうちに泊まった時のこと、覚えてる?」

「…半分、くらい、ですかね…」

恥ずかしいけど、正直に答える。
暗いから、顔の赤さがわからないのが救いだ。

いやはやお恥ずかしい。オトメにあるまじき失態だ。

「居酒屋を出て都を支えて歩きながら、都の体温や柔らかさを体の左側でずっと感じてて。何かもうね……すごく離れがたくて。

抱き締めたい衝動と、ずっと闘ってた。

都は半分目が瞑れた状態で、ソファで寝るって言ってたんだけど、俺がどうしても離したくなくて、ベッドに寝かせたんだよ。

抱き締める以上のことは絶対にしない、と固く決めて、ベッドで都を抱き締めた。

もう、それだけで、今まで感じたことのない…何と言うのかな、充足感というか安心感というか。

『俺のあるべき正しい場所に、やっと帰ってきた』って思ったんだ。

もちろん、男としての欲求はあるよ?
でも、それ以上に、『この場所』を失いたくないから、都の気持ちを無視して何かすることはできなかった。

だから、…もうちょっとなら、待てる。」

最後はちょっと拗ねたように言うと、修一さんは私を抱き締める手に力を込めた。



何もかも初めてな私を、気遣ってくれているのが伝わる。

私は修一さんの胸に額を擦り付けて、ありがとうございます、と呟いた。

暫くそのままでいたけど、修一さんが私の頬に手のひらを当てて、ゆっくりと上を向かせる。

とびきりの、甘い笑顔。
また顔が赤くなるのがわかる。顔を背けたくなるけど、修一さんの熱を持った瞳の奥から、目が離せない。
その瞳の奥に、抑えられた欲望が混じった気がした。

「──でも、キスだけはさせて。

毎日、俺がどれだけ都のことが好きか、思い知ってもらわないとね。」

───こうして私は三日間、毎晩、気絶しそうに気持ちのいい長いキスをされたのだった──

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