甘い運命

1-8

今日は金曜日。お泊まりの日だ。
今日の晩ごはんは、濃厚豚骨ラーメンと餃子のセットだ。ああ、美味しかった!

うっとりしながら持ってきた荷物を整理していると、それを見ていた修一さんが口を開いた。

「都、最近よく泊まりに来てくれるから、寝室のクローゼット少し空けといた。服とか置いといていいよ。
あと、洗面台の棚も開けといたから、化粧品も。
明日買いに行こう。」

え?……いやいやいや!!それはちょっと!
買うのも置いとくのもちょっと!!

驚きのあまり言葉が出ず、首と手を左右に振りまくる。
……う、気持ち悪い……
ラーメンと餃子を食べた後に首を振るとか、自殺行為だ……

「毎回持ってくるの面倒だろ?
都、食事も安いところしか行かないし。俺の気が済まない。
お礼も兼ねて、プレゼントする。」

いや別に、肩の凝るような高いところは好きじゃないだけだ。
安くて旨い、これ基本。
私はその考え方にのっとって、毎回店を選ぶ。

「私の好きなところに連れて行ってくれるんですよね?」

と言えば、修一さんは何も言えない。
唯一、『勝った』と思える瞬間だ!

でも今回は、引かないらしい。

「俺の家に置くものだから、俺が買うのが当然だよね?」

ニッコリ笑った顔が、悪魔の微笑みに見えた。
何だか黒い笑顔だ。くそう、屁理屈に負けた気がする。

言い出したら、曲げてくれないし。困った人だ。

ていうか、根本的に、女の痕跡を部屋に残すのどうよ?
誰か来たら、勘違いされるよ?

…などなど色んな理由を並べて、何回も断っても聞いてくれない。
結局次の日、近くのショッピングモールに連行されてしまった。

諦めて一通りカゴに入れると、ひょいっと取り上げられて、レジへ。取り返そうとする手をかいくぐって、支払いをされてしまった。

仕事ができる男は、私などが敵う相手ではないと痛感してしまう……。

ん?いやいや、ダメでしょう。
我に返って、やっぱり支払いますとお金を財布から出そうとするところで、ギロリと睨まれた。

「俺に恥をかかす気?」

ひぇぇぇ怖い!
イケメンに睨まれるって、すっごく怖い!!
修一さんはクール系イケメンだから、視線の切れ味抜群だ。心臓が凍る!
逆らうのはやめとこう。

すごすごと精神的に撤退する私。
…修一さんに逆らえないよう、躾られている気がする……。
ちょっと自分にガッカリした。


そんな様子を、修一さんは満足そうに見ていた──
< 8 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop