毒林檎がなくても
「白雪」

「はい、王妃さま」


かつてそう呼ぶように言いつけた役名で自分を呼んだ白雪姫に、お妃さまは寂しげに目尻を下げました。


「……もしあなたさえよければ、母と呼んでくれますか?」


白雪姫がぱっと顔を上げます。


「はい……!」


その目がきらきら輝いているのを見て、お妃さまは少し嬉しそうに微笑みました。


「わたくしがあなたを娘と呼ぶのを、許してくれるかしら」

「はい……!」


お妃さまはぶんぶん頷く白雪姫の手を取って立たせると、にっこり笑って言いました。


「共に帰りましょう、わたくしの可愛い娘」

「はい、おうひさ……おかあ、さま」


白雪姫は照れたように笑いかけました。

お妃さまも照れたように笑いかけました。


そうして白雪姫とお妃さまは、二人で並んで、お城の方に向かって歩いていきました。





むかしむかし、あるところに、大変美しいお姫さまとお妃さまがおりました。

ふたりは本当の親子ではありませんでしたが、それはそれは仲よく暮らしています。


そのころ、七人の小人と異国の王子さまは、ちっとも出番がなくて膨れておりましたとさ。


おしまい。
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