優しい音を奏でて…

「奏ちゃん?
奏ちゃんは、その気持ち、優音に伝えた?」

「……… 」

私は無言で首を振った。

「まずは、どう返事するかじゃなくて、
どうして返事ができないかを伝えておいで。
優音は、きっと一緒に考えてくれるから。
奏ちゃんが不安に思ってる事、どうしたら
優音を信じられるか、一緒に考えて、安心
できる答えを探してくれるから。」

「うん………
そうだね。
そうする。
葵ちゃん、ありがとう。」

葵ちゃんに相談して良かった。



「で、ここからは、優音の母としての意見。」

私は驚いて顔を上げた。

「優音にとって、奏ちゃんは、特別なんだよ。
奏ちゃんは、元彼と結婚しようって思える位、
好きになって、裏切られて次の恋に進めない
位、傷ついたけど、優音には、多分、奏ちゃん
以外に心動かされた女の子はいないと
思うの。」

「え?」

「そもそも、優音は恭子ちゃんとほんとに
付き合ってたのかな?
前に奏ちゃんから聞いた時にもへんな気が
したんだけどね。

高校生の頃までは、あの子、恭子ちゃん?
クリスマスとかバレンタインとかの行事ごとに
プレゼントを持ってうちに来ることは
あったけど、優音は全部断ってたみたい
だったわよ?

大学生になってからも、1度もうちに連れて
きた事もなければ、挨拶された事もないもの。

就職してうちに帰ってきた後も、あの子、
休みの日に家でゴロゴロしてたし。
普通、彼女がいたら、デートに連れてく
でしょ!?」

私は驚いて言葉も出ない。

「奏ちゃんが東京に行って、1年位した頃かな?
翔子(しょうこ)ちゃんが、休みの日に
うちに遊びに来たの。」

翔子ちゃんは、私の母だ。

「その時に、奏ちゃんに東京で彼氏ができた
って話になってね。

たまたまそこでテレビを見てゴロゴロしてた
優音が聞いちゃったのよ。
それからしばらく、優音、荒れてね〜。
しばらくして落ち着いたかと思うと、今度は
女の子、取っ替え引っ替えしてたみたい。
あの子、それなりにモテるみたいだからさ、
来る者拒まず?みたいな。
奏ちゃんの事、忘れたいのかな?って思って、
何も言わずに見てたけど…。

でも、結局、この人!って言う人には、巡り
会えなかったみたいで、私、未だに優音の
彼女って1度も紹介してもらった事ないのよ?」

ふふっと葵ちゃんは笑った。


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