ダドリー夫妻の朝と夜
 一向に距離の縮まらない主人夫妻に、ついに呆れ果てたのだとはチラともうかがわせぬ澄ました顔で、家令は主人を煽る。

「旦那様のお帰りをお確かめになれば、すぐに自室にお戻りになりますので」

「そこまで知っていて、なぜ今までわたしに知らせなかった!」

「……まさか本当に気づいていらっしゃらなかったとは、露ほども思わず。それに、そもそも奥様を待たせるなとおっしゃったのは旦那様でございますゆえ、旦那様の命にそむく行為をどうしてお伝えできましょう」

 詫びの言葉も聞かぬうちに、アーサーは階段を上っていった。



「あぁあぁ、ついにお伝えしてしまいましたねぇ」

 取り残された執事が肩をすくめると、家令は大きな息をついた。

「さすがに頃合いでしょう。これ以上こじれさせては、ダドリー家の将来に差し障りが出かねません」

 冷めた物言いを咎めるような執事の視線に、家令はフンッと鼻息を荒くした。

「さすがに今朝は、見るに見かねました」

「はたから見れば、あんなに好き合っているご夫婦も珍しいでしょうにねぇ。そのぶん口を出しづらいったら」

 そろってため息をつくと、家令は幾分心配そうに、執事はいくらか面白そうに、階上を見上げた。

 


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