ライアー
1
「で、今回は何?
昨日、シアトルから戻ってきたばっかでねみーんだけど。」



だるそうに眉をひそめるそいつを流し見て
届いたお酒を一口流し込む。
甘味の欠片もなければ口当たりも最悪。
鼻の奥がツンとする。





「それは、悪かったわね。だけど、別にこれといって用はないのよ。たまにはあなたと飲んであげないとかわいそうだと思って。」



やけに度数の高いそれにのどが焼けそうなほど熱い。




「あっそ。じゃあ寝るわ。
勝手に飲んでろ。



ッテーーー!
  おい!」



しばらく頭を抱えた後
凄まじい表情でこちらを睨んでる
顔が整ってるからかすごい迫力。
噛み殺されそうな勢いなんですけど。





「何かしら。寝てればいいじゃない。」
すました顔を装い、苦くて不味いだけの酒を喉に通す。




「暴力女。傷害罪で訴えるぞ。」
頭頂部をさすりながら、苦痛に顔を歪める。
別にサディスティックな趣味はないのだけど、ドSな男の苦痛な表情ってゾクっとする。




「なによ。大げさね。ちょっと小突いただけじゃない。
…それよりね、あんた!営業職なら、
少しは飲むのに付き合いなさいよ。」


外面がいいばっかりで、なんて冷酷で無慈悲な男なんだろう。

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