緋色の勇者、暁の聖女
 だけどジャンさんが捕まってしまった事で、計画は大幅に繰り上げられ。それにガーディとの交渉の為、強制的に僕らを拘束する事にもなってしまった。

 クレールは、大きく計画が変わってしまった事により、僕たちにも何の説明も出来ないまま、裏切った形になってしまったのだ。

 彼は僕たちとジャンさん、二つの間で苦しそうに揺れているのだ、そう男は言った。

 クレールは、カナリみたいに話をするのが上手くない。

 それに理由があるにしろ、僕たちに剣を向けてしまった事に言い訳をするような、クレールはそんな男ではないから。

 だからきっと、苦しんでいるんだ……


「よかった……」


 今までじっと話を聞いていたレイが、不意にそう呟いた。


「クレールは、ちゃんと私たちを仲間だと思ってくれてた。だから、苦しんでいるんだよね」


 その想いだけで、何もかも解決したような晴々とした表情でレイは笑顔になる。


「ばっかみたい! ちゃんと説明してくれれば良かったのに! ほんと、クレールばっかみたい!」


 カナリも、呆れたように笑った。

 そうだ、クレールは僕たちを仲間だと思っているからこそ、苦しんでるんだ。レイのその言葉に、僕もクレールに対する不安が吹き飛んだ。

 レイはすごい。

 僕は彼女に人を信じる強さ、その大切さを、教えられた気がした。
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