緋色の勇者、暁の聖女
 だけど、どうやらそれに従うしかここを出る方法は無いみたいだった。僕は半ばやけくそ気味に答えた。


「行くしかないみたいだけど、最後にもう一つ質問。暁さんはそっちの世界にいるの?」




「ああ……行けば必ず逢えるよ――――ヒイロ」




 『声』がそう言ったとたん、足元の感触が消えた。ふっと、まるで身体が宙に浮くような感覚。漆黒の闇のせいで、下に落ちているのか、上に昇っているのか分からない。だけど感じる、物凄い風圧。その嵐のような風の中、僕の意識は徐々に遠のいていった。

 意識を無くす少し前、そう言えばあの『声』は僕の名前を言っていたな、なんてぼんやりした頭で考えていた。
















< 12 / 296 >

この作品をシェア

pagetop