緋色の勇者、暁の聖女
人の話し声が聞こえる。
辺りは、ざわざわとした雰囲気。目を閉じていても分かる、顔に光が当たりジリジリと焼けつく様な暑さ。湿気を含んだぬるい風が頬を撫でた。
暑い……
僕は目を閉じたまま思う。ああ、やっぱり夢だったんだ、と。
漆黒の闇も、声だけの誰かも。僕はずっと夢をみていたんだ。ここはやっぱり学校の屋上で、きっといつの間にか僕は眠ってしまったんだ。
でも……誰かの気配を感じる。
暁さん……?
そこまで考えると突然、冷たい水が僕の顔に大量に降りそそいだ。
「――――うわっ!!」
驚いて思わず声が出てしまった。慌てて起き上がり、目を開ける。
今度は何?!
そう思って辺りを見回すと――――そこは屋上では無かった。
「ここ、どこ……?」
僕は砂浜にいた。
それもたぶん、日本じゃない。だって、僕の知っている日本の海岸の景色じゃないから。海外……とも思ったけど、どうやらそれも違うみたいだ。
座り込んでいる砂浜の砂は白に近い色でサラサラで、眼前に広がる海は何処までも青い。砂浜を囲むように生えている木々は、テレビでも本でも見た事の無い葉を繁らせている。
何、これ……どうして僕はこんな所にいるんだろう?
「――――お~い、キミ! 目が覚めたのに、いきなり無視なの?!」
突然女の子の声で後ろから声を掛けられた。驚いて振り返ると、そこにはやっぱり見たことも無い服装の二人が立っていた。