緋色の勇者、暁の聖女
 あの集落を出て、僕たちは移動を開始した。

 移動は地下の街を追い出された人たちと、治安隊で幾つかのグループに分けられた。大人数でいたら、たちまちガーディ教団に見つかってしまうだろうから。

 集落にいたのは治安隊だけだったけど、街の近くに隠れていた行くところの無い人たちも、ジャンさんは一人残らず受け入れた。あの地下街を追い出された人たちだ。

 大人も子どもも、ジャンさんを信頼してついてくる。

 それを切り捨てることなんて、ジャンさんは全く考えていない事がみんな分かっているみたいだった。


 僕たちはジャンさんと一緒に、最後のグループで移動した。そして移動の前に僕はクレールから、オプトゥニールを返してもらった。クレールは相変わらず無口で無愛想だけど、いろいろな事を乗り越えて、僕たちの間では確かに心が繋がった気がする。


 目的地は、ここから一つ山を越えた先にある、砂漠だ。そこには治安隊の基地があるらしい。


「アエーシュマやガーディ教団なんかに見つからねえように、すげえの作ったんだぜ!」


 ジャンさんは誇らしげにそう言って笑った。


 長い移動は、反逆者を捜索しているガーディ教団に警戒しながら、比較的ゆっくりと行われた。それに、グループには子どもやお年寄りもいる。だから、無理をさせないように、というジャンさんの配慮もあった。

 歩きながら、夜火を囲みながら、僕たちはいろいろな事を話した。レイやカナリは僕が話す、僕の世界の話が面白いみたいだった。
< 144 / 296 >

この作品をシェア

pagetop