緋色の勇者、暁の聖女
「ジャンさん!」
クレールが叫んだ。
「……俺、は…………死んだんじゃ…ねえのか……?」
ジャンさんは擦れた声でそう言うと、無くしてない片目をゆっくりと開けた。
もしジャンさんがそのまま起きあがっていたら、僕は嬉しくて飛びついてしまったかもしれない。だけどさすがのジャンさんも、まだそこまで動く事は出来ないみたいだ。
目だけでゆっくりと辺りを見回す。そして視線の先にミュールさんを見つけると、ハッとした声で言った。
「お、まえが……やったの、か? ……聖女の力…使っちまったのか……?」
ミュールさんはその言葉にゆっくりと頷くと、心から絞り出したように言った。
「あなたを、助けたかった……」
「バカが……! 使うな、て、言ったじゃねえか……!」
「でも! そうしなければ、あなたが……!」
ミュールさんは星の印を持っていたんだ……そしてそれをジャンさんは知っていた。
小さな声で交わされた二人の会話は、それを示していた。
もしかしたらジャンさんは、だからアエーシュマを倒したかったのかもしれない。
ミュールさんが聖女として旅に出てしまわないように。彼女を失くしてしまわないように。