緋色の勇者、暁の聖女
 だけど……相手は銃を持っている。少しでも動けば簡単に撃たれてしまうだろう。

 どうすれば、あのドアまで辿り着ける?

 僕が考えを巡らせていると、クレールが声を潜めて言った。


「……俺が突破口を作る。ヒイロはレイたちとそこを抜けろ」

「……でも! クレールだけじゃ……!」


 いくらクレールでも、剣ではあの銃と人数には勝てない。無謀すぎる。


「……あたしもここに残る!」


 僕とクレールの話を聞いていたのだろう、今度はカナリが言った。カナリは腰に付けていた荷物入れのポーチから、幾つもの魔法石を取り出す。


「もう、値段とか勿体ないなんて言ってられない! あいつらに大盤振る舞いしちゃうよ!」

「ヒイロ、俺に聖剣は使えない。星の印も無い。お前とレイが行くしかないんだ!」

「そうだよ! ここまで来られたんだもん! ヒイロ、あたしたちを信じて!」


 ――――胸が痛い。


 こんな状況で、仲間を置いて行くなんてできない。

 でもこの痛みを、苦しみを乗り越えなければ、グラファイトは倒せない。この重みに答えなければ平和なんて掴めないんだ。


「……分かった、僕は行くよ!」


 もう一度、オプトゥニールを握りなおす。羽のように軽いはずなのに、それは何よりも重い気がした。


「よおし! じゃあ、いっくよ~!」


 カナリが叫んだそれが合図だった。カナリは魔法石を幾つか選ぶと、敵に投げつける。石は小さかったので、彼らの足元に落ちたがそれが何かは分からなかったようだった。
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