緋色の勇者、暁の聖女
 旅の最初の目的地は、海辺の洞窟にある祭壇。

 そこで聖剣オプトゥニールに力を吹き込むらしい。そこにある『なんとか』っていう魔法石を使うんだと、レイが教えてくれた。

 聖剣に力が宿ったら、今度は山の祭壇へ行き、もう一つ魔法の力を吹き込むんだって。

 それがアエーシュマを倒す儀式なんだそうだ。

 全部一ヶ所でやればいいのに、って思ったけど……この旅は、聖女と勇者の絆を作るものでもあるらしいから仕方がないみたいだ。

 『絆』が強ければ強いほど、聖剣の力も強くなるんだそうだ。


「――――で、聖女。出発はいつにする」


 クレールがレイにそう問うと、彼女は少し考えてからキッパリと言った。




「出発は今夜。街の明かりが全て落ちてから」




 勇者と聖女の旅立ちに期待する人々の騒ぎを避ける為、誰もが寝静まった時間に決まった。

 いよいよ始まる旅。

 僕は不安と、その心を奮い立たせる気持ちが混じりあい、握りしめた手にじわりと汗をかいていた。
















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