緋色の勇者、暁の聖女
自分の無力さを、嫌というほど思い知る。
勇者になって聖剣を与えられ、僕はみんなを守れると思っていた。だけど、そんな気持ちを粉々に砕かれてしまった。
僕は誰も、守れなかった……それが現実だ。
悔しさと悲しさ、それに自分自身への怒りで、心が痛い……
――――人を守るって、どうしたらいいんだろう。
僕には本当にそれができるのかな……
「――――ねえ、この子の事なんだけど……」
カナリが男の子と手を繋ぎながら言った。
「この近くにさ、ガーディ教団の本部があるの。そこで保護してもらおうよ」
一人ぼっちになってしまった男の子の事を一番に気をかけていたのはカナリだった。会った時から男の子と喧嘩ばかりしていたのに。
男の子はカナリの優しい気持ちが分かるのか、側にずっと寄り添っていた。
「グラファイト様なら、きっと良くしてくれるよ」
カナリがそう話しかけると、男の子はやっぱり無言のままコクリとうなずいた。
◇