緋色の勇者、暁の聖女
 ガーディ教団の本部がある街までは三日程かかった。小さな男の子を連れているという事もあり、彼の体力の事を考えて休憩を多く取りながら進んだからだ。

 三日の間、男の子は一言もしゃべらなかった。

 まるで言葉を忘れてしまったかのようだった。うなずいたり首を振ったりするだけで、僕たちとの全ての会話を済ませていた。

 お爺さんを亡くしたショックで、一時的に声が出せなくなったのかとも思ったけど……だけど夜になり眠ると、うなされながら寝言を言っているから、どうやらそうでは無いみたいだ。

 男の子はうなされながら両親やお爺さんを呼んでいた。苦しそうに、悲しそうに、何度も。

 それに気付いていたのは僕だけじゃない。みんなたぶん気が付いていたが、誰もその事には触れなかった。




 三日目の夕方、大きな川を越えると広い岩場が広がる場所にでた。

 そしてそこには、僕がこの世界に来てから見たこともないような立派な家が建ち並ぶ街が見えたのだ。今までのような集落ではなく、ここは都市と呼べるほど大きくて立派だった。

 街へ入ると、人は皆綺麗な服を着込み、高そうなアクセサリーを付けているし、品数豊富なお店が幾つもある。立ち並ぶ家々も、今まで見てきた簡素なものではなく、お屋敷みたいな立派な建物ばかりだった。

 僕はこんな街がある事に驚いてしまった。


「すごい街だね……!」

「ここがガーディ教団の本部のある街だよ!」


 僕の言葉に、カナリはまるで自分が褒められたように嬉しそうに教えてくれた。
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