天罰
「え?弟?」「うん、悟くんだっけ?」「あぁ、あいつか。もちろん元気だよ」と答えつつも俺が就職してから一人暮らしをし始めたのであいつが今実家にいること以外は何も知らなかった。「そういや、水城さん俺の弟とやけに仲良かったよなぁ」とちょっと嫌味っぽく言うと「そうね!可愛くて弟のようだったからつい可愛がっちゃったんだね」と懐かしむようにどこか重要なことを伏せて誤魔化すように答えた。「弟と公園行ったりしたそうだね」「え?」彼女の目が一瞬動揺したように思えた。「何度か俺がいない時に家にも遊びに来てたんだってね」「悟くんから聞いたの?」彼女が少し焦り始めたように思えた。「いや、近所の人が言ってた・・・」「そう・・・」彼女は乾きを潤すようにお酒をまた口に含んだ。「何して遊んだの?」「どう言う意味?」「え?」彼女の人を訝しがるような目になぜか俺が動揺し始めた。「いや、あまりにも仲良さそうだったって聞いて」「それだけよ!ゲームしたり学校の話をしたり。それだけ。まさか私が小林くんの弟に変なことしたとでも?そうだったら彼があなたに言うはずでしょ?嫌なことされたって。そんなことするはずないじゃない」とどこか苛立ちながら彼女は言った。俺はすぐ謝罪した。

「弟の連絡先教えようか?」「え?」突然の俺の提案に彼女は不機嫌になった。「なんで?」「いや、また弟に会いたかなぁと思って。きっと悟も喜ぶよ」そう言うと「別に会いたいだなんて思ってないよ。それに私、既婚者だし」「あぁ、そうだね。ごめん」そう言うと沈黙になったので俺は「じゃ」と言って逃げるようにその場を後にした。宴も酣となり幹事が締めの挨拶をし始めた。それが終わると口々に皆が帰る準備をし始め、俺はトイレに向かった。トイレから出ると水城さんが外で待っていたので俺は驚いて思わず声を上げた。「わぁ、どうしたの?」そう言うと彼女は「ねぇ、やっぱり教えて」と言って来た。「え?何を」「弟さんの連絡先」これが天罰が下る始まりとなった。
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