天罰
帰る頃になってみんなが玄関に集まっている時、弟が俺に向かって嬉しそうに「お兄ちゃん、見つかったよ!テーブルの下にあった!」と報告してきた。「なんだよ、そうか。良かったな」と言うと弟は嬉しそうに笑顔で「うん!」と応えた。みんなが「良かったねぇ」と言って場が盛り上がった瞬間、それを打ち砕くように水城さんが今日初めて自分から言葉を発した。「ねぇ、それ何のゲーム?」「え?」弟は一瞬何が起きたのか分からず少し戸惑ったが俺を一瞥した後、すぐに彼女にゲームの名前を言った。するとすかさず彼女も「私もそれ持ってるー!楽しいよね?」と言って話し始めた。弟と彼女が会話しているという不思議な光景を目の当たりにしながら俺たちはただ黙って見守っていた。「桃ちんってゲーマーだったんだね」と誰かがボソッと呟いた。俺はなんとも複雑な心境だった。俺は一度も水城さんと話したことがないのに、弟と話している彼女はなんとも楽しそうで初めて見せる屈託のない笑顔がなんとも可愛くて胸が締め付けられる思いだった。二人の会話が終わりみんなが帰る時、笑顔で手を振ってまた学校ねって口々言ってる中で彼女だけは気まずそうに俺に手を振った気がした。あの表情の意図することがこの時の俺にはまだ分からなかった。
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