HATE or LOVE

溜まり場として使っている教室を出て、廊下で見張り役をしていた奴等を従える。

じゃらじゃらと着飾ったアクセサリーに、捲った腕から見えるタトゥー。すれ違う奴のほとんどが、一般校とは違う、やんちゃで派手な見た目が好きな奴等ばかり。

(俺も人の事言えねえか。)

廊下を渡り歩くだけで、そんな奴等が"いつもと同じ行動"を止め、連れ歩く俺たちを羨望か野望か…。ぼうっと眺める姿は未だに慣れないモノがある。

進学校にも関わらず、男は喧嘩に明け暮れ女は毎度標的を代えて苛め抜くこの学校は、転入当初こそ驚きはすれど、それも一時の事だった。

女は玩具(おもちゃ)な男。

男は見せ物な女。

そんな生活にも慣れ始めた頃、俺は当時の頭に呼び出され、見事現在の地位をてにいれた。



ーー二年の頭(トップ)。



軽いような重いような。そんな地位に何となく居座る様(さま)は何故だか滑稽(こっけい)に思えた。

「…。」

「…はぁ。なーアキちゃん、何で廊下って無駄に長いんだろうな。」

「…千草(ちぐさ)、触んな近寄んなヤニ臭い。それと、ちゃん付けやめろ。」

「かーっ、連れないねえ。うちのNo.2は。」

「うるさい。」

適当に校舎を練り歩く。
「飽きた。」なんて考えながら後ろに続く列を振り返れば、仏頂面の"アキ"が短くなったヤニを誰かが持っていた灰皿へ捨てていた。

170センチと平均身長より少し低めのコイツ。

花房秋人(はなぶさあきと)。

通称アキちゃん。

華奢ゆえか童顔で、短い髪で更に小顔効果も抜群。大きな瞳は何かつけてるんじゃないかと思うほどに、長い睫毛で飾られていた。

だからか、死に急ぐ奴はアキをからかう。

それが心底気にくわないアキは、そんなバカを相手にすればするほど強くなり、俺が頭になった頃にNo.2へと指名したのだ。

線の細い髪がさらさらと風に揺れる。

そこいらの女より綺麗な顔立ちに、いつも取り巻き連中は男女問わず見惚れていた。

「お前髪伸びたな。切らないのか。」

目までかかっている前髪に触れ、そっと横へ流してやる。

「面倒…。それに、千草は好きでしょ。この顔と合わない地位とのギャップ。」

擽(くすぐ)ったそうに少し身を引いたアキは、俺の手を払って嫌味たらしく笑った。

「まあ、それも良いがな。お前の魅力は絶対に裏切らないって言う信頼と。そこいらの連中と違って、力の差がひと目で判断できるその野生の勘、だけどな。」

「千草を守るために俺はいるからな。」

「…ほんっと、お前は良い奴だねえ。ちーさんはますます惚れちゃうよ。」

「はいはい。」



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