シェヘラザード、静かにお休み

シーラはゆっくりと女の方へ近づいた。

写真より短くなっているが、髪色は王女のもの。

髪の毛は売ったのだろうか。あの綺麗な色なら、高く売れるだろう。

「早く!」

王女は、近づくシーラと捕らえられた男の両方に、視線をうろうろさせる。

シーラの腕から血が出ていた。それは先程男が投げたカトラリーがぶつかった時にできた物だろう。

「王女様と、そこの男に、危害を加えるつもりはありません」

掌を見せてそれを伝える。男が初めてシーラの姿を捉えた。

表の道から祭の音が聞こえる。
ここは、地獄のように静かだった。

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