シェヘラザード、静かにお休み

ベッドの脚まで巻き付いてきたのを止める。自分の指先を見た。

さよなら。

緑がさっと引いていく。シーラは息を長く吐いた。

窓の外を見上げて、耳を澄ませる。廊下の向こうから足音が聞こえた。

先程後ろに控えていた男の一人が煙草とマッチをシーラに差し出す。
それを受け取って、口に咥えた。

慣れたように火を起こし、紫煙を吐く。

その様子を見て、男は椅子に腰を下ろす。いつもルイスが座っていた場所だった。

「手紙はどうする」

「いえ、要らないわ。届ける相手もいないし」

その提案を却下する。男は「そうか」とだけ言って黙った。

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