シェヘラザード、静かにお休み

嫌そうな顔での第一声がこれ。恰幅の良いマリアをルイス越しに見て、シーラは黙る。

「ご両親が心配されていました! 何度も電話しても出ないって。市街でテロがあったとか……」

「正確には城内で爆発があったんだ」

「坊ちゃんは大丈夫だったんですか?」

この通りだ、とルイスはマリアを避けて玄関に入る。それから思い出したように後ろを振り向く。

「……シーラだ。風呂と服を用意してやってくれ」

マリアはシーラの姿を見た。不健康そうな細い手足、伸びっぱなしのブラウンの髪。
病院着のようなものに、裸足。

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