ドクター時任は恋愛中毒
えっ。いきなり時任先生に代わるの? こ、心の準備とかさせてもらわないと……!
一気に高鳴る胸を抑えつつ、電話の向こうに耳を澄ませていると、一分くらい間があった後で、時任先生の低い声が聞こえた。
『……み、水越か』
「は、はい……っ」
『藍澤から、話は聞いたと思うが、その……』
一番重要なところで黙り込んでしまった時任先生は、まるでこれから言いにくいことを切り出すかのように何度も咳ばらいを繰り返している。
なにこの緊張感……! はやく何か言ってよ~!
やきもきしながら連続咳払いを聞かされ続け、風邪でも引いたんじゃないかと心配し始めたころ、ようやく時任先生が話し出す。
『お前と……休日を共に過ごしたいと思っているのだが。突然ふたりきりというのもアレだろうと藍澤に相談したら、ヤツの婚約者が“それなら一緒に遊園地にでも”と誘ってくれてだな……その、お前は、どう思う?』
そこまで話して、最後にもう一度だけ『ゴホッ!』と咳込んだ時任先生。
……も、もしかして、この不自然な咳って、めちゃくちゃ照れてるのをごまかしてる?
そう思うと、電話の向こうの彼が頬を赤らめている姿が自然と想像できて、なんだかきゅんとしてしまう。
さっきの、“部屋の隅でガタガタ震えてる”ってのも、あながち嘘じゃなかったりして。