白き竜の語り部
「あちい!?」

「なんだこりゃ!」

 眼前に現れた炎の壁に、野盗どもは狼狽えておる。なんとも見事なファイアウォールではないか。

 戦いのなかでエルドシータが躊躇うと思うな。貴様らはことごとくシレアの刃を浴びる事となる。

 順手に持ち替えたシレアの刃は、閃光を走らせ野盗の体を切り裂いていく。我は、その光景に見惚れて野盗の一人が我の頭上に剣を振りかぶっていた事に気付かなんだ。

 これはいかん。魔法は間に合わぬ。ブレスを吐けばシレアにも当たってしまう。さすがの我でも、こやつの刃に当たれば傷を負うてしまう。

 そのわずかな逡巡の間(ま)にシレアが駆け寄った事に驚き、息も無くつっぷしている野盗を見下ろした。

 なんと鮮やかなのか。なんと軽やかなのか。これが気高きエルドシータなのかと、我は時間を忘れて見入ってしもうた。
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